新たな分野として特定技能「自動車運送業」を追加するための検討が2023年に開始されました。2023年度中の法制化を目指していますが、追加が認められ外国人材のドライバーが増えれば、人手不足が深刻化している物流業界の労働力確保がしやすくなります。しかし外国人ドライバーであるが故のハードルも存在しますので、本記事で解説します。
当記事はこちらの方におすすめです。
- 外国人の受け入れを検討している物流関係者
- 運転手不足に困っている運送会社
Xin chào! 日本の皆様🇯🇵🇻🇳
LOD南支社です!
以前から運送業界の人手不足は深刻と言われていますが、さらに2024年4月からは運転手の時間外労働に上限(年960時間以内)が設けられる予定です。その結果予想されるのが、人手不足による物流の停滞が起こる「2024年問題」が指摘されています。
現在、特定技能外国人の受け入れが認められているのは12分野となっていますが、新たに「自動車運送業」の追加が認められれば13分野目となります。
※特定技能の12分野については「特定技能の受入れが可能な12分野(まとめ記事)」へ
ただし自動車運送業の場合は他の分野と異なり、運転手として仕事をするためには自動車運転免許の保有が必須となります。トラック運転手であるならば、中型や大型の免許も必要となってきます。
自動車免許に加えて、道路交通法を守りながら安全に自動車を運行しなければならず、法律の理解や日本の運転マナーや暗黙の了解といったことも分かっていなければ、重大な事故へつながる危険性があります。
「自動車運送業」が特定技能の分野に追加された場合に備えて、外国人を運転手の特定技能として受け入れるために必要な事項や、考えておくべき事項を知っておきましょう。
本記事は、外国人の運転免許・特定技能の受入れ要件・運用の想定事例について解説しており、自動車運送業が特定技能を受け入れられる分野に追加された時のための内容となっています。(予測の部分が一部含まれます。)
※2024年1月に「自動車運送業」が新たに特定技能分野として正式に認められることになりました。
外国人が日本の自動車運転免許を取得するには?
外国人が日本で自動車運転免許を取得するためには、日本で免許試験に合格して取得する方法と、外国の自動車運転免許を日本の運転免許に切り替える方法があります。
日本で免許試験に合格するのは、一発試験に合格するのはほぼ不可能に近いこと、教習所に通ってから試験に合格するのであっても、来日したての外国人が日本語を理解しながら教習所に通うのは難しいことや、免許取得までに時間がかかってしまいコストもかかることから、本記事では触れないことにします。
すなわち、特定技能の外国人ドライバーを受け入れるとなったら、すでに外国の自動車免許を取得している人が対象となり、外国の自動車免許を日本の自動車免許に切り替えるという形をとることを前提に述べていきたいと思います。
日本の自動車運転免許に切り替えるためには?
外国の自動車運転免許を日本の免許に切り替えるためには、各都道府県の運転免許センターで手続きを行うことになります。
外国の免許を日本の免許に切り替えるための審査を受ける条件は、
- 外国免許が免許を取得した国において有効な免許証であること
- 外国免許取得後、免許を取得した国に通算3か月以上滞在していたこと
- 切り替えの申請する都道府県に住所があること
以上の3つがあります。また注意事項として、二種免許への切り替えはできないこと、代理申請はできないことがあります。
必要書類や実施項目は各都道府県で同じですが、全体的な流れは各都道府県で若干違いがあります。
以下では愛知県で切り替えを行う場合を例に取りながら説明します。
全体の流れ
愛知県の場合は下記の流れとなっており、2日かかることになります。ただし、他の都道府県であると1日だけで全ての手続きと試験が終わるところもありますので、手続きをする都道府県の流れについては別途ご確認をお願いします。
- 書類審査の予約
- 書類審査
- 証紙購入
- 受験の受付
- 適性試験
- 知識確認
- 知識確認の合格発表
- 審査の受付
- 実技確認
- 実技確認の合格発表、免許証の交付
1.書類審査の予約
Webサイトから申請する場所、申請日時を選択して必要事項を入力し申し込みます。
2.書類審査
審査に必要な書類は次のとおりです。
- 外国免許証(注1)
- 外国免許証の翻訳文 1部(注2)
- パスポート
- 在留カード
- 住民票等
- 申請用写真 1枚
- 日本の運転免許証(現在及び過去に交付を受けたことのある人)
- 国によって必要な書類(ブラジル、フィリピン等)
(注1)
免許取得後、3か月以上の滞在が外国免許証等で確認できない場合は下記の書類で対応することになります。
・外国免許の発給機関(外国行政庁)が発給する免許取得年月日、更新記録等の運転免許記録(経歴)証明書
・当該外国免許証の更新前の旧免許証
・外国行政庁が発給した外国免許証の内容に関する証明書等
・当該外国の出入国証明書等
※外国で取得した証明書等には、当該国の外務省による公印確認又はアポスティーユが必要です。
(注2)
【外国免許を翻訳する場所】
・ 免許証を発給した外国の行政庁又は当該外国の領事機関
・ 国家公安委員会が認めた外国の法人等
・ 国家公安委員会が指定した法人(JAFなど)
3.証紙購入
必要な受験手数料等は下記のとおりです。
4.受験の受付
受験するための受付を窓口で行います。
5.適性試験
車両操縦に必要となる視力や色覚の検査をします。
6.知識確認
適正試験で問題なければ知識確認の試験を受けます。
交通ルールなど10問ほどの日本語で記載された問題に回答します。
※出題例はJDLさんのサイトで紹介されています。
7.知識確認の合格発表
知識確認の試験に合格したら、実技確認試験の日時が指定されます。
知識確認試験は7割から8割以上の正答が求められるという情報もありますが、詳しい合格基準については不明です。
8.実技確認試験の受付
実技確認試験を受験するための受付を窓口で行います。
9.実技確認試験
切り替え対象の免許に応じた車両の運行を行います。
10.実技確認試験の合格発表、免許証の交付
実技確認試験に合格したら、日本の免許証が交付されます。
交付手数料は2,050円です。
※愛知県の外国免許から国内免許への切替えについてはこちら
※免許の切り替えの必要期間については下記のブログで紹介しています。
「【特定技能:自動車運送業】外国人トラックドライバー受入の条件・方法とは?」
以上が外国の運転免許から日本の運転免許に切り替える一連の流れとなります。次に特定技能分野「自動車運送業」として外国人を受け入れる場合の要件を確認していきましょう。
特定技能「自動車運送業」として外国人を受け入れるためには?
自動車運送業の特定技能として外国人を受け入れる際には、主に下記の要件を満たす必要があります。
- 外国人が技能試験に合格している
- 外国人が日本語試験に合格している
- 外国人と結ぶ雇用契約が適切である
- 企業が受け入れる企業自体が適切である
次にこれらの要件を順番に見ていきます。
外国人が技能試験に合格している
まだ自動車運送業が特定技能分野として法制化されていないため、具体的な試験内容については分かりません。ただ、他の産業分野と同じようなものとなることが想定されます。
おそらく、自動車運送業の特定技能のために作られた技能試験か、運送業に関わる何らかの日本の国家試験に合格することが技能試験合格として扱われることになると予測しています。
学科試験と実技試験の2科目が設定され、それぞれで60%以上の得点が必要になってくると思われます。
外国人が日本語試験に合格している
技能試験と同様、まだ法制化されていないため予測となりますが、
「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」への合格が要件とされると思われます。
こちらの日本語要件は、他の特定技能分野(介護を除く)と同様です。
外国人と結ぶ雇用契約が適切である
報酬、雇用形態、労働時間、福利厚生等が雇用契約で適切に定められている必要があります。外国人という理由で、同等の日本人よりも低い給料や待遇にしてしまうことは禁止されています。
業務内容については、各産業分野で特定技能が従事できるものとなっている必要があります。自動車運送業分野の法制化後に明らかになります。
また他の分野と同様に、産業分野ごとに特有の基準も設定されるはずなので、こちらも法制化後に分かることになります。
※詳細は「特定技能外国人を受け入れるには?|企業・団体が満たすべき条件」へ
受け入れる企業自体が適切である
社会保険料を納めている、失踪者を出していない、特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者の非自発的離職者が発生していないこと等が満たすべき条件としてあげられています。
詳細は下記のブログで確認することができます。
※「特定技能外国人を受け入れるには?|企業・団体が満たすべき条件」へ
また他の分野と同様に、産業分野ごとに特有の基準も設定されますので、こちらは法制化後に分かることになります。
※特定技能の受け入れに関する全般事項は「【保存版】ベトナム人の特定技能を受け入れるための手順」へ
特定技能「自動車運送業」の業務内容について
では実際に特定技能の外国人が従事できる業務内容は、どんなものとなりそうか予測をしてみたいと思います。
タクシー、バスの外国人運転手確保への対応開始
まず大きなポイントとして、外国免許から日本の免許に切り替える場合、二種免許への切り替えができないことがあります。
つまり、特定技能の外国人が日本の二種免許試験に合格することが求められることになります。
現状受験は日本語のみとなっていますが、2023年度中に外国語での受験が可能となるように警察庁は準備しています。
試験の多言語化を進める背景には深刻な人手不足を受けた業界の要望があります。
2021年度の法人のタクシードライバーは22万1849人で06年度から約4割減りました。路線バスは運転手不足により地方を中心に減便や一部路線の廃止が相次いでおり、人材確保が急がれています。
試験問題は各都道府県警が作成し、警察庁は23年度中に英語や中国語、韓国語、ベトナム語など20言語に翻訳した例題を配布し多言語化の環境を整える方向です。
使用する言語や実施時期は各地域の外国人の居住状況や要望を踏まえ都道府県警が判断します。
日本国内で試験が実施されるため、日本在住の外国人が特定技能試験と併せて二種免許試験に合格すれば、タクシー運転手やバス運転手の特定技能として働くことができるようになります。
ただし、タクシーやバスの運転手となると接客も必要となってくるため、日本語の会話能力がしっかりしていないと、スムーズな運行ができなくなるおそれもあります。
試験に合格すれば良いわけではないので、外国人にとっては依然としてハードルが高いと言えるでしょう。
また、二種試験の実施場所が日本国内に限られることから、特定技能の対象が日本国内在住の外国人が主となります。したがって、技能実習や高度人材の対象職種ではない自動車運送業では、国内で外国人材を確保することが難しくなると予想されます。
※2024年3月、自動車運送業の特定技能は入国後、「特定活動」として6カ月の在留を認められる案が出されており、この間に二種免許を取得することも想定できます。
対策としては、日本国内の留学生にタクシーやバス運転手になるための各種の試験を受けてもらい、特定技能として採用することが考えられます。
留学生の中には、旅行業界に興味を持っている方も多いので、運転手としてまずはキャリアをスタートしてもらうことができるかもしれません。
よって、海外から特定技能外国人を採用して呼び寄せる場合は、物流関係のトラック運転手が妥当な受け入れ職種になってくるかもしれません。
トラック運転手として受け入れる
トラックを運転するためには、中型や大型の免許があればよく、外国免許からの切り替えで対応することができます。
※2024年3月、「自動車運送業」の特定技能は、入国後に外国人免許を国内免許へ切り替える手続きが必要なことから、その間は「特定活動」として6カ月の在留を認められる案が出されています。
もっとも、日本の交通ルールやマナーを知らないと大きな事故に繋がってしまうので、車両操縦技術の他に、ルールやマナーの知識も習得する必要があります。
このため、外国人単独で車両を運行するには相当期間の研修が必要になってくるといえます。
トラック運転手の場合は、送り状に記載されている日本語を読解して送り先住所地の把握することや、荷主や送り先企業の担当者または個人客との日本語コミュニケーションが必要になってきます。
さらに、トラック運転手は個人で車両を運行する場合がほとんどなので、時には自分で機転をきかせて行動しなければならない場面も出てくると予想されます。
自動車運送業の外国人材には判断力や人間力も必要となってくると考えられます。
まとめ
物流は私たちの生活を支えるためになくてはならない産業の一つです。物流は「経済の血液」と言われるように、流れが鈍くなったり止まってしまったら大変なことになってしまいます。
現在、政府において特定技能「自動車運送業」について検討されていますが、ぜひ外国人材の力を活用できるようにしてもらえたらと思います。
物流の2024年問題を考えると、外国人活用というのが最も有用な対応手段かと思っていますが、皆さんはいかがでしょうか?
トラックドライバーの特定技能人材受け入れに関する情報は、下記のブログで確認することができます。ぜひ、こちらもご覧ください。
「【特定技能:自動車運送業】外国人トラックドライバー受入の条件・方法とは?」
LOD南支社では、特定技能、技能実習、エンジニア、インターン、ベトナム現地の教育機関との提携など、様々な形で人材に対する課題解決をおこなっています。
ベトナム人材について何かご質問があれば、ぜひお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡いただければと思います。
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